ブログ

asadablog

企業の反社会的勢力対策について 第2回(全3回連載)

カテゴリー:ブログ

4月18日に「企業の反社会的勢力対策について」の第1回を掲載しました。今回はその第2回目です。

「反社会的勢力」という言葉は、平成19年、日本政府の犯罪対策閣僚会議が出した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」によって大きくクローズアップされました。同指針は、反社会的勢力を次のように説明しています。
「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である『反社会的勢力』をとらえるに際しては、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等といった属性要件に着目するとともに、暴力的な要求行為、法的な責任を超えた不当な要求といった行為要件にも着目することが重要である。」
犯罪対策閣僚会議は、「暴力、威力」ということと「詐欺的手法」ということの2つの側面をあげています。

「詐欺的手法」ということが入っているのは、実際に、反社会的勢力は人を脅すだけではなく、人を騙すからです。例えば、令和4度の暴力団等の検挙数の統計を見ると、恐喝の検挙人数が453人であるのに対し、詐欺の検挙人数は1424人で、実に3倍以上となっています。平成30年から令和4年の5年間を合計しても暴力団等の検挙数は、恐喝の2892人に対して詐欺は7425人であり、詐欺が恐喝を大幅に上回っています。

人を騙すことにはいろいろありますが、騙すことの大きな典型は、人に恐怖感、不安感をもたせる騙しです。例えば、騙してお金をとる典型例として「美人局(つつもたせ)」というものがあります。国語辞典では「夫や情夫としめし合わせた女が、他の男と通ずるかに振る舞い、それを言い掛かりとして夫や情夫がその男をおどし、金銭などを巻き上げる、ゆすり」等と説明されています。これも被害者に恐怖感、不安感をもたせる騙しです。

反社会的勢力が人を騙すことの背景には暴力が控えています。反社会的勢力は暴力で威圧することができるからこそ、容易に人を騙すことができるのです。上記の統計で、暴力団等が多数の詐欺を行っていることの理由はここにあります。反社会的勢力において、騙しは暴力の一つであり、暴力の重要な形態であると言うことができます。(続く)

2023年7月27日
弁護士 米倉 正実

企業の反社会的勢力対策について(第1回)
企業の反社会的勢力対策について(第3回)