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2025年10月1日施行の育児・介護休業法改正について

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2025年1月31日のブログでは、同年4月1日から施行される育児・介護休業法の改正内容についてご紹介しました。この改正は段階的に施行されることとなっており、2025年10月1日には、さらに追加の改正項目が施行されます。今回は、その同日施行分の改正内容について説明します。

1.柔軟な働き方を実現するための措置等の義務付け

2025年10月1日から、事業主は、3歳から小学校就学前までの子を養育する労働者に対し、以下に掲げる措置のうち少なくとも二つ以上を講じることが義務付けられます(義務に違反した場合、刑事罰はありませんが、勧告に従わない事業者は公表される場合があります。後述する「2.仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務」も同様です。)。これは、柔軟な働き方を可能にし、子育てを行う労働者が働きやすい環境を整えることを目的としています。

対象となる措置は、以下のとおりです。

  • 始業時刻の変更等の措置
  • 在宅勤務等の措置
  • 育児のための所定労働時間の短縮措置
  • 育児と就業の両立を容易にするための休暇の付与
  • 保育施設の設置・運営その他これに準ずる便宜の供与

なお、どの措置を実施するかは、事業主が一方的に決定することはできず、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、組合がない場合は過半数代表者の意見をあらかじめ聴取する必要があります。

すでにテレワークや時短勤務を導入している企業も多いかと思いますが、①労働者の意見を聞くこと、②2つ以上の措置を講じること、に注意が必要です。

2.仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け

2021年の改正では、労働者本人または配偶者から妊娠・出産の申出があった場合に、育児休業制度の説明および取得意向の確認を行うことが義務付けられました。

今回の2025年10月施行分の改正では、これに加えて、より踏み込んだ「個別の意向の聴取」と「配慮」が新たに義務として定められています。具体的には、妊娠・出産の申出を受けた際には、勤務時間帯や勤務地、両立支援制度の利用期間といった点について労働者の意向を聴取し、その内容に応じて、業務量の調整や配置の見直し、制度の柔軟な運用などの配慮を行う必要があります。

今回の改正では、「制度を整備すること」だけでなく、実際に働く従業員一人ひとりの状況に応じた「実質的な支援」を行うことが求められています。子育てを行う労働者の状況や希望はさまざまであり、一律的な対応では不十分ということだと思います。
今回の法改正を実質的にも機能させるためには、労働者と丁寧に対話を重ね、その意向や事情を正確に把握した上で、柔軟な対応を行うことが不可欠です。

2025年7月4日 
弁護士 角谷 茉美