暴力団対策について(4)
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暴力団対策についての連載4回目です。今回は、全国でただ一つ「特定危険指定暴力団」(暴力団対策法30条の8)の指定を受けている北九州の工藤会について説明します。
1 概要
工藤会は、すでに、平成26年にトップが逮捕され、令和3年に有罪判決が出ています。それまでの間、市民・企業に与えた被害・恐怖は極めて大きなものでした。今後も、工藤会の暴力が本当になくなるまで油断は禁物です。
2 工藤会の特徴 全ての暴力団との共通性
トップが逮捕されるまでの約30年間、工藤会は、北九州の市民・企業に対して大きな暴力をふるってきました。金銭要求を断った健康センターに殺鼠剤を撒き多数の市民に被害を及ぼした事件、港湾事業への介入を断った漁業関係者を殺害した事件、暴力団追放運動をしていた経営者の店に手榴弾を投げこんだ事件など、市民・企業に対する暴力は多数にのぼります。
市民・企業に大きな暴力をふるい地域を暴力で支配したという点に工藤会の特徴があります。ただし、どの暴力団であっても市民・企業に暴力をふるうことによって不当な経済的利益を上げていますので「お金のための暴力」という点で工藤会も他の暴力団も同じです。「お金のための暴力」は全ての暴力団に共通です。
3 社会を暴力で支配させない
社会のうち一部分を、暴力が支配してしまうことは実際に起こり得ます。北九州における工藤会の暴力はその例でしたし、以前にも同じような事例はありました(佐賀県の宮地組事件など)。今後も油断すれば同様の事態は起こり得ます。社会を暴力で支配させないという意識は、警察・弁護士にとってはもちろん、社会全体で重要であり続けます。
次回(連載第5回 最終回)は、暴力団への課税の問題について説明します。
2024年10月11日
弁護士 米倉 正実