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暴力団対策について(3)

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連載の3回目です。今回は、暴力団対策法について説明します。
暴力団対策法(正式には「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)は平成4年に施行され、30年以上にわたって、暴力団対策の中で重要な役割を果たしてきました。

暴力団対策法には面白い言葉がいくつか出てきます。例えば「縄張」です。何々組の縄張り、などという言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、「縄張」は暴力団対策法に定義があります。「正当な権原がないにもかかわらず自己の権益の対象範囲として設定していると認められる区域」(暴力団対策法9条)、これが縄張の定義です。また「用心棒」という言葉も出てきます。「用心棒」の定義は、「営業を営む者の営業に係る業務を円滑に行なうことができるようにするため顧客、従業者その他の関係者との紛争の解決又は鎮圧を行なう役務」(同条)です。

「暴力団」の定義は、「その団体の構成員が集団的又は常習的に暴力的不法行為を行なうことを助長するおそれがある団体」(暴力団対策法2条)です。暴力的不法行為を「助長するおそれがある」にととまらず、そのおそれが「大きい」団体については公安委員会が指定することによって「指定暴力団」(暴力団対策法3条)と言われることになります。

暴力団対策法は、暴力団員がさまざまな不当要求をすることを禁止しています。警察は、暴力団員による不当要求を止めさせるため、「中止命令」を出すことができます。令和5年の中止命令は約1000件です。その中で多いのが寄付金・賛助金等の不当な金銭要求に対する中止命令であり、約400件出されています。上記で紹介した「用心棒」代要求に対する中止命令は約100件です。

暴力団対策法に出てくる言葉や中止命令の運用実績を見ると、暴力団が市民・企業から不当な経済的利益を得ている様子が浮かび上がってきます。暴力団対策法の運用状況は、今後もウォッチを続ける必要があります。

次回は、暴力団対策法の「特定危険指定暴力団」の指定を受けている北九州の工藤会について説明します。

2024年9月24日 
弁護士 米倉 正実