暴力団対策について(2)
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暴力団対策について連載の2回目です。今回は、暴力団による違法行為のうち特徴的な類型である詐欺と暴力について、そして、詐欺と暴力の関係について説明します。
1 詐 欺
まずは、詐欺です。とても意外に思われるかもしれませんが、暴力団は人を脅すよりも多く人を騙しています。人を騙すことは暴力団による違法行為の典型です。
令和5年の暴力団構成員等による刑法犯の検挙件数をみると合計約1万件のうち詐欺罪(人を騙して金銭等を奪う犯罪)は1600件です。検挙された人数で見ると1332人であり、全刑法犯のうちで最多になっています。
これに対して、恐喝罪(人を脅して金銭等を奪う犯罪)の検挙件数は約350件ですので、件数として見て、詐欺罪は恐喝罪の約5倍にも上ります。
1600件の詐欺の中には多様なものが含まれていますが、近年は、オレオレ詐欺などの特殊詐欺に暴力団が深く関与しています。
2 暴 力
次は、暴力です。暴力は、法的な犯罪としては暴行罪(人に暴力をふるう犯罪)、傷害罪(暴力によって傷害をおわせる犯罪)のほかにも多様なものがありますが、暴行罪と傷害罪だけを取りあげてみても、令和5年の検挙件数は2罪の合計で1574件です。
暴行罪・傷害罪を含めて多様な暴力によって、暴力団は、社会に対して、恐怖のイメージを発信しています。そして、「暴力団は怖い」というイメージを利用して、暴力団は、一般市民に対してはもちろん、企業や行政に対しても、業務の妨害や不当な要求(企業対象暴力、行政対象暴力)を行っています。令和5年の企業対象暴力、行政対象暴力の検挙件数は417件に上っています。
3 詐欺と暴力はつながっている
暴力団は、特殊詐欺その他多様な詐欺によって巨額の資金を得ていると考えられます。詐欺は暴力団の典型的な資金獲得活動です。資金獲得活動としての詐欺の背景には、暴力行為によって作られた「暴力団は怖い」というイメージがあります。
「暴力団は怖い」というイメージを利用して、暴力団は、例えば特殊詐欺グループを支配したり、詐欺被害者が被害回復するのを諦めさせたりします。
詐欺と暴力はつながっています。暴力団の本質には詐欺と暴力の両者があり、暴力団対策はこの両者を抑止すべきものです。
次回は、暴力団対策法について説明します。
2024年8月20日
弁護士 米倉 正実