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企業間でのカスハラについて

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先日、住宅設備販売など手がけるX社の従業員が取引先の社長から、約2時間に渡り「お前からアポイントはもらっていない」「お前はそんなに偉いのか?何様だ」などと怒鳴り続けられるといったカスタマーハラスメント(カスハラ)を受け、抑うつ状態になったとして、X社が取引先の会社に対して損害賠償請求を求める訴訟を提起したというニュースがありました(※1)。

カスハラというと消費者などの個人が思い浮かびますが、厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(※2)では、カスハラは「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」とされており、「顧客等」とは「顧客や取引先」をされているため、取引先の言動も「カスハラ」に該当する場合があります。

相手が取引先の場合、従前の関係性もあり、取引の規模や期間によっては、カスハラがあったとしても要求を拒否したり、関係を遮断することは難しい場合もあるかもしれません。それでもやはり、従業員がカスハラにさらされ続けながら、取引を継続していくことは健全ではないと思います。

被害者が何も言ってこない・言えない状況では、カスハラや不当要求がエスカレートしていくことも少なくありません。今回のように従業員の心身に不調が生じ、休職に追い込まれてしまうこともあります(会社が労働者を守らなかったこと(安全配慮義務違反)を理由とする損害賠償請求訴訟を提起されるリスクもあります)。重要な取引先であったとしても、カスハラを放置して取引を続けることは、長い目で見れば、自社に損害が生じることになると思います。
取引先であっても、カスハラや不当要求があれば改善を求め、従業員を守るという姿勢が重要です。(当事務所のカスハラ対応専用ページはこちら)。

2024年5月14日 
弁護士 角谷 茉美