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相続土地国庫帰属制度について

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不動産を相続したが、相続人間で誰も取得したい人がいないし、売れそうにもないので困っている、というような事はありませんか?
当事務所で実際にあった相談例でも、相談者の親御さんが亡くなり、書類の中から知らない土地の契約書が出てきて、不動産の登記を確認したところ亡くなった親御さんの名義になっていたというケースがありました。相当以前に原野商法で騙されて購入し、価値もないので長年放置されていた土地のようでした。
相続人の中には誰もこの土地を相続したいという人はおらず、また、近隣の不動産業者に相談してみたけれど買い手はつきそうにないということでした。

このように、相続した土地について、誰も引き取り手がいないような場合のために設けられたのが相続土地国庫帰属制度です。

1 相続土地国庫帰属制度の趣旨・利用状況

この制度は、社会情勢の変化に伴い所有者不明土地が増加していることに鑑み、相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)(※以下「相続等」といいます)により土地を取得した者などがその土地の所有権を国庫に帰属させることができるようにして、所有者不明土地の発生の抑制を図ることを目的としています。
制度は2023年4月27日から始まっていて、法務省の速報値では、制度開始から2024年2月29日までの申請件数は1761件、申請された土地の地目の内訳は田・畑が38%、宅地が37%、山林が15%、その他が10%となっています。
2月29日までに承認され国庫帰属となった件数は150件、却下件数6件、不承認件数9件、取り下げ件数183件とのことですので、その他の1400件余りは現在も審査中と思われます。

2 申請できる者

この制度は誰でも利用できるわけではなく、申請をするには下記の要件を満たす必要があります。

  1. 自分が取得した土地であること
  2. 相続等により取得した土地であること
  3. 単独所有の土地であること

例外として、土地の共有者の他の1名以上が相続等により共有者となった場合は、共有者全員で行うのであれば申請が可能です。

3 国庫帰属が認められない場合

また、例えば下記のような土地は、国庫帰属は認められません。

  • 土地上に建物が存在する場合
  • 土地上に車両や樹木等が存在する場合
  • 担保権等が設定されている場合
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない場合
  • 災害の危険により、土地周辺の人、財産に被害を生じさせるおそれを防止するため、措置が必要な土地

事前に法務局の相談窓口で相談できます。相談窓口については、法務省のホームページに案内があります。

手続きを進めていく中で、土地上の樹木の存在が判明し、所有者が樹木を撤去して国庫帰属に進んだ事案もある様ですので、まずは相談されることをおすすめします。

4 制度の利用方法

制度の利用に際しては、まず申請権者が法務局に国庫帰属の承認申請を行い、法務局の担当者が書面調査・実地調査などを行います。その結果、承認されると、負担金の納付を求める通知が届きますので、負担金を納付すれば国庫帰属となります。
審査を受けるには、審査手数料として土地1筆あたり14,000円が必要です。また、負担金は宅地や田・畑・その他土地(雑種地・原野等)の場合は面積にかかわらず原則として20万円とされています(事案によっては例外もあるようです)。森林は面積に応じて決まっており、例えば750㎡の土地は25万4,000円などとされています。

5 おわりに

なかなか簡単ではなさそうですが、2024年4月1日から相続登記が義務化され、例えば相続(遺言も含みます)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請が必要になりました。正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料というペナルティの適用対象となります(相続登記の義務化についての当事務所のブログもご参照下さい)。このような社会情勢に鑑みれば、相続した土地を放置しておくことは困難であり、この制度のニーズは高まってくると思われます。
お悩みの方は利用を検討されてはいかがでしょうか。
なお、詳しくは法務省のホームページに説明がありますので、ご参考になさって下さい。

2024年4月5日 
弁護士 細田 祥子