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全国初「カスハラ」防止条例制定へ(東京都)

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この度、東京都において「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の防止をうたった条例制定に向けて準備が進められているとの報道がありました(注1)。
東京都は、同条例を2024年内に都議会に提出することを目指しており,条例制定となればカスハラ防止を柱とする条例は全国初とのことです。
同条例ではカスハラの禁止を明記し、従業員をカスハラから守る企業側の責務を規定することも検討中で,禁止行為の具体事例もガイドラインで示す見通しとのことです。

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客等からの不当・悪質なクレームのことを指し、カスハラによって従業員が過度な精神的ストレスにさらされたり、平穏な業務遂行に支障が生じるおそれがあるため、企業側には適切な対応が求められているところです。

カスハラについては、これまで当事務所のコラムやセミナーでも何度か取り扱ってきましたが、現状では、各企業において不当な要求・クレームに対して毅然とした対応が必要であるとの認識は広がりつつあるものの、現場でそのような要求・クレームに直接さらされることとなる従業員を従業員を守るという視点まで十分に浸透しているとは言い難いというのが実感です。
このことは、企業経営者だけでなく現場の従業員自身にも言えることで、「不当な要求やクレームであっても耐えなければならない」「まわりの迷惑になるので一人で対応しなければならない」「クレーム対応に失敗すると職場での評価が下がってしまう」といった,カスハラ対策としては誤った考えが従業員の側にも根強く残っているのではないでしょうか。

今回の東京都のカスハラ条例では、条例自体に罰則は設けないとのことで、その実効性に疑問があるとの意見もみられるようです(なお、カスハラの行為態様によっては脅迫罪や強要罪といった刑法犯に該当する可能性はあります)。
ですが、本条例によってカスハラ対策についての考えが広く表明され、カスハラが従業員を傷つける決して許されない行為であるとの認識が世間一般に広まることで、企業経営者、従業員、顧客等の意識がより良い方向に変ることが期待されますので、本条例の制定には大きな意義があると考えます。

具体的な条例の内容などはこれからの発表を待つこととなりますが、是非、大阪をはじめ他の地方自治体でも同様の動きが広まっていくと良いですね。

2024年3月4日 
弁護士 小谷 知也