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カスハラと企業の責任~551蓬莱社員死亡について、労災と認めなかった国の決定の取消を求めて提訴とのニュースに接して

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2023年11月22日、大阪地裁でとある訴訟の第1回口頭弁論期日がありました。ニュースによると、551の豚まんで有名な株式会社蓬莱の社員だった男性は2018年6月に自殺しました。男性の母親は、男性が自殺したのは、客から理不尽なクレームを受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)や長時間労働が原因だとして労災申請をしましたが、労基署は労災と認めませんでした。今回の訴訟は、その労基署の判断の取消を求めるものだということです。

ネットニュースのタイトルには労基署というというフレーズが入っていませんでしたが、上記の通り今回の訴訟の被告は会社ではなく労基署です。
ただ、カスハラが許されないという認識は社会に広がってきています。令和2年の厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)においても、職場におけるパワーハラスメントだけではなく、顧客等からの著しい迷惑行為について、(1)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、(2)被害者への配慮のための取組(例:メンタルヘルス不調への相談対応、1人で対応させない等の取組)、(3)被害を防止するための取組(例:マニュアルの作成や研修の実施)が望ましいとされております。
企業は従業員の安全や健康に配慮する必要があるという「安全配慮義務」を負っていますが、このような社会の流れを踏まえると、カスハラ被害を放置することも程度によっては「安全配慮義務違反」と言われることがあり得ます。企業は従業員をカスハラ被害から守らなければならないということは今後ますます認知されていくものと思われます。
将来的には、カスハラについて企業がきちんと対応しなければ従業員から訴えられる日が来るかも知れません。

日々顧客と接する現場では、従業員と顧客とのいさかい、顧客からの叱責などが次々と発生し、その場をおさめるため理不尽と思っても顧客をなだめたり謝ったりして、大事にならずに済んでいることが多いのだろうと想像します。
 一方、現場の対応でその場をおさめることを続けている間に、従業員が疲弊し、会社として安全配慮義務を怠ったという状況になっていることも十分ありうるものと思います。
 現場の対応でおさめるのか、それ以上は従業員に対応させてはいけない(=安全配慮義務を怠った状況になっている)のか、その線引きはとても難しいと思いますが、今後ますます、従業員を守らなければならないと判断されるケースが増えてくる様に思います。
 経営者の皆さんは、従業員が理不尽なクレームに晒され続ける事のないよう、十分ご注意いただきたいと思います。
 また、対応に悩まれた場合は、弁護士に相談されることをおすすめします(不当要求・カスハラ対応専用サイト「STOP不当要求」はこちら

2023年11月28日 
弁護士 細田 祥子