企業・事業者を狙う詐欺～無料求人広告の詐欺
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１ 無料求人広告の詐欺とは
近頃、企業・事業者の方から似たような詐欺の相談を複数受けています。それは大まかには次のような相談です。
ある日、知らない会社から電話があり、求人広告をインターネットに無料で掲載しませんかと言われました。とにかく無料であるという説明であったので、まあ無料なら･･･と答えると、申請書をＦＡＸするのですぐに署名してＦＡＸしてもらえればすぐに掲載開始しますと言われ、言われるがままＦＡＸしたところ、３週間ほど経過してから急に多額の広告料金を請求されました。申請書を確認したところ小さい字で３週間経過したら有料掲載に移行することが書いてありました。どうしたら良いでしょうか。。。
実はこの手のトラブルは、令和元年頃に多発し、当時もメディアにとりあげられ、一部の弁護士会で会長声明が出されたり（※１）、厚生労働省（ハローワーク）のＨＰで取り上げられたり（※２）と、注意喚起もされていました。
偶然という部分はあるでしょうが、立て続けに相談があったことからすると、まだまだこの手の詐欺が発生し続けているのではないかと感じています。
この詐欺の悪質なところは、企業・事業者を狙っているところです。個人であれば、不当な契約を結ぶことになったとしても、消費者契約法で保護されうるのですが、企業・事業者の場合、消費者契約法で保護されません。
そのため、申請書や契約書に署名押印してしまうと、消費者に比べてその効力を覆すことが難しく、「申請書に書いてありましたやんか。ちゃんと確認して署名したんでしょ」などと詰められると、もはや逃げ道はなく支払うしかないのではないかとの考えに陥ってしまいがちです。それをわかっていて、詐欺業者は狙っているのです。
２ 無料求人広告の詐欺にあった場合にできる法的主張
しかし、諦めてはいけません。消費者契約法の適用がなくとも、①そもそも契約が成立していない、②錯誤を理由に取り消す（民法９５条１項）、③詐欺を理由に取り消す（民法９６条１項）、④公序良俗違反で無効である（民法９０条）、⑤契約の停止条件が成就していない（民法１２７条１項）といった主張をすることで支払をせずにすむ可能性があります。
ケースバイケースであり、必ず同じ結論になるというわけではありませんが、実際に無料求人広告の事案において、詐欺取消を認めた裁判例（那覇簡裁令和３年１０月２１日判決）、公序良俗違反を認めた裁判例（東京地裁令和元年９月９日判決）、契約の停止条件が成就していないとした裁判例（東京地裁令和元年１１月１３日判決）などがあります。
３ 無料求人広告詐欺にあった場合の対応
単刀直入に言えば弁護士に相談することをお勧めします。上記２で述べたように、適切な法的主張をすることにより、支払を免れられる可能性がありますが、事案によって、詐欺業者の説明内容や契約内容が異なるほか、契約に至るまでの経緯、作成した書類などは異なってきます。
弁護士に相談をすれば、それらを適切に交通整理することができ、適切な法的主張を書面で出すことができます。
一概には言えませんが、詐欺業者は基本的にはいかに時間と手間をかけずに効率よく金銭を取得するかを考えます。弁護士とやりとりをすること自体、時間と手間がかかりますし、裁判になれば、さらに時間と手間がかかります。おまけに、書面で適切な法的主張がなされていれば詐欺業者としても時間と手間をかけた上で、裁判に負けるリスクも考えます。そうなると、そこに時間と手間をかけるよりも、次のカモを見つけて金銭を取得する方が早いと考え、簡単に請求を諦めることも少なくありません。
したがって、無料求人広告の詐欺にあった場合には、早い段階で弁護士に相談し、書面を送るなどの対応をすることをお勧めします。
当事務所では、このような企業・事業者に対する詐欺も含め、日頃より、企業・事業者に対する不当な要求について多数の相談を頂いています。詐欺被害や不当要求についてお困りの方は是非ご相談頂ければと思います（※３）。
２０２３年５月１１日
弁護士 鶴田 昌平
※1 厚生労働省のＨＰ
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/news/invitation_caution.html
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/doc/kyuujinkoukokutoraburu.pdf
※３ 当事務所不当要求対応専用ページ ＳＴＯＰ不当要求
https://stop-futo-yokyu.com/