法律Q&A

FAQ

母が亡くなり、母と同居していた姉から遺産を全て姉が相続する内容の遺産分割協議書に署名・押印するよう求められました。私は母の財産状況はよく分かっていませんが、もともと遺産をもらうつもりはないので遺産分割協議書の作成に応じようと思います。気を付ける点はありますか。

 遺産をもらうつもりがないなら、遺産分割協議書は作成せず、家庭裁判所に相続放棄(民法915条1項)の手続をされることをおすすめします。家庭裁判所で相続放棄の手続を取ると、はじめから相続人でなかったことになりますので、お姉様としてはあなたの署名・押印がなくても遺産分割が出来るようになります(金融機関や法務局への手続には、あなたが相続放棄をしたことを示す家庭裁判所の書類が必要です)。

 お姉様の求める遺産分割協議書を作成するのも、相続放棄をするのもあなたが遺産をもらわないという意味で同じですが、相続放棄をしていないと、将来お母様の負債が判明した時に債権者から支払いを求められる恐れがあります。お母様の財産状況がよく分かっていないということであれば尚更、遺産分割協議書の作成にはリスクがあるといわざるを得ません。

 お姉様との間では、負債は全てお姉様が負担するという合意があるかも知れませんが、それはお姉様との間では通用しても、債権者には通用しません。債権者にお姉様が全部相続したからお姉様に請求してと伝えても、債権者はその要請に応じる法的義務はありません。

 債権者から請求が来て慌てて相続放棄を試みるということもありますが、既に遺産分割協議書を作成してしまっていると、法定単純承認(民法921条1項)に該当し、相続放棄が認められなくなる恐れがあります。
 当事務所でも、相続するつもりがないからと自分が何ももらわない前提の書面作成(遺産分割協議書や、他の相続人へ相続財産である不動産の所有権移転登記手続を行うための書類など)に応じてしまい、後日被相続人の債権者から請求を受けて困っているというご相談がしばしば見受けられます。そのような場合でも何とかなることもありますが、そもそも紛争に巻き込まれないよう、まずは相続放棄をされることが望ましいでしょう。

カテゴリー
相続
タグ
遺産分割協議,相続放棄

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